2026年8月3日
- セミナー
【登壇レポート】「製造業のサービス化」の本質とは何か──アフレルが20年で直面した転換点と、見えてきた「価値」の正体
2026年6月17日、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI※1)主催の「第4次産業アカデミー」に、アフレルの谷口と中野が登壇しました。
テーマは「製造業のサービス化」。「モノからコトへ」と言われるようになって久しい中、製造業における「サービス化」とは、本当に製品へサービスを付加することなのでしょうか。
今回のセッションでは、アフレルの20年にわたる取り組みを題材にしながら、「顧客にとっての価値とは何か」「サービス化とは何を変えることなのか」について議論が交わされました。本レポートでは、その内容を振り返りながら、製造業のサービス化について考えます。
※1 RRIとは
ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会は、「ロボット新戦略」(2015年2月10日日本経済再生本部決定)に基づき、同戦略に掲げられた「ロボット革命」を推進するために、民間主導で設立された組織的プラットフォームです。「ロボット新戦略」においては、デジタル化及びネットワーク化を活かしつつ高度のセンサーや人工知能を駆使して作業を行うシステム全般を新たな「ロボット」の概念として広く位置づけ、以下を目指すこととされています。ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会は、これらの目標の実現に向け、広く関係者が連携し、具体的なアクションを起こしていくための、オープンなイノベーションプラットフォームとして、活動しています。
今、なぜ「サービス化」が求められているのか
セッション冒頭では、本テーマの背景について説明がありました。
ドイツでは2011年から「インダストリー4.0」と並行して、国家プロジェクト「スマートサービスワールド」が進められ、デジタル技術を活用した新たな価値提供のあり方が議論されてきました。
一方、日本では製造現場の自動化や効率化に注目が集まる一方で、「顧客価値を起点にビジネスそのものを再設計する」というサービス化については、まだ発展途上にあり、こうした背景を踏まえ、本セッションでは、従来の保守サービスや製品付随型ビジネスとは異なる視点から、「製造業のサービス化」の可能性が語られました。
アフレルが経験した2つの転換期
サービス化を考えるうえで紹介されたのが、アフレルが20年の歩みの中で経験してきた2つの転換期です。
第1の転換期:組み込みソフトの巨大化と「教育」への挑戦
1990年代後半、あらゆる製品にソフトウェアが組み込まれ、システムは急速に複雑化していきました。
創業者の小林は、車載制御などの「物理世界」と金融システムなどの「論理世界」の双方で開発に携わってきた経験を持っていました。
その経験からたどり着いたのが、「論理(プログラム)だけでは、物理世界(モノ)は動かない」という実感でした。
その課題を乗り越えるヒントとなったのが、レゴ® ロボットでした。
当時は玩具として見られていたロボットを、あえて大企業のエンジニア教育へ導入。プログラムだけでは理解しきれない、現実世界との関わりを体験できる教材として活用しました。
ソフトウェアだけでは解決できない課題に対し、「教育」という形で価値を提供したことが、アフレルにとって最初のサービス化の成功体験となりました。
第2の転換期:ロボティクス事業への挑戦
現在、アフレルは二つ目の転換期を迎えています。
それが、人材育成で培った知見を製造現場の自動化支援へ展開する「ロボティクス事業」への進出です。
従来、産業用ロボットの導入は、一品一様のシステム構築が前提となるケースが多く、導入コストや期間が大きな課題でした。
そこでアフレルは、ソフトウェア業界の「パッケージ化」という考え方を取り入れ、より導入しやすいロボットシステムを提供しています。
さらに特徴的なのは、ロボットを導入して終わりではないことです。
現場がロボットを使いこなし、自ら改善し、変化に対応できる状態まで支援する。 この「内製化」を支える考え方には、教育事業で培ってきた経験が生かされています。
アフレルが大切にしてきた「よそ者・若者・馬鹿者」という考え方
こうした歩みを振り返る中で、アフレルの根底にある「癖」として見えてきたのが、「新しい価値を生み出すのは、よそ者・若者・馬鹿者」という考え方です。
例えば、
- 業界の常識を疑い、玩具だったロボットを教育へ活用した「よそ者」の視点
- 実績のない中でロボット競技会の立ち上げに挑戦した「若者」の行動力
- 常識外とも言われたロボット導入のパッケージ化へ踏み出した「馬鹿者」の挑戦
「これらは最初から描いた計画ではなく、変化の中で生まれた気づきを素早く実装してきた積み重ねだった」と振り返りました。
シミュレーションと現実──「想定外」が価値を生む
サービス化の価値を考える上で重要な視点として語られたのが、「現場には必ず想定外がある」という話です。
例えば、ロボット競技会の会場の照明条件が地区大会と全国大会で異なるなど、実際の現場では思いもよらない要因がロボットの動作に影響することがあります。
教育現場でも同様です。
ロボットのタイヤの摩耗や床材、照明条件など、シミュレーションだけでは再現できない現象が数多く存在します。
こうした「思い通りにならない体験」を通じて初めて、設計や改善の重要性に気づくことができます。 体験して得られる「これが原因ではないか」という直感的な気づきは、全員に平等に蓄積されていくものであり、これこそがシミュレーションと現実の関係において教育がもたらせる最大の価値だと語りました。
議論から見えてきた「顧客価値」とは
セッション終盤では、「顧客価値とは何か」という議論へと話が広がりました。教材やロボットそのものではなく、その先にある成果や変化に価値がある。教育であれば「設計できる人材が育つこと」。製造現場であれば「自ら改善し続けられる現場になること」。
顧客が本当に求めているのは、製品ではなく、その先に生まれる設計力、突破力、そして将来の競争力なのです。
今回の議論では、そうした目に見えにくい価値を言葉にし、お客様と共有しながらサービスを設計していくことが、これからの製造業におけるサービス品質を左右するという考え方が示されました。
おわりに
今回の議論から見えてきたのは、サービス化とは、製品に新たなサービスを付け加えることではなく、顧客が本当に必要としている価値を見つめ直し、それを実現する仕組みを設計することだということです。
アフレルの20年の歩みもまた、その価値を模索し続けてきた挑戦の積み重ねでした。
製造業を取り巻く環境が大きく変化する今、「お客様が本当に求めている価値は何か」という問いに向き合うことの重要性を、改めて認識する機会となるセッションでした。
