2024年11月12日
002-3.エレキ入門-第1回「超音波センサ」
前回までは、レゴマインドストームのプログラムを紹介するという「ソフトウェア入門」を続けてきましたが、今回からは趣向を変えて電気に関係する情報を紹介していきたいと思います。名付けて「エレキ入門」です。電気の知恵をロボット作りに生かしてみましょう。(文/松原拓也)
◆ 超音波とは
「超音波センサ(Ultra Sonic sensor)」とは超音波を使って距離を測るセンサです。 NXTになってから初めて正式に採用されたセンサです。
「超音波」というのは、周波数の高い音のことです。音というものは空気が振動して伝わります。この振動は波として表すことができます。
1秒あたりに発生する波の数を「周波数」と言います。周波数の単位の記号はHz(ヘルツ)です。そして、一般的に15kHz以上の周波数の音のことを超音波と呼びます。超音波は人間の耳で聞くことができません。 NXTの超音波センサでは40kHzの超音波が使われています。つまり、1秒に40000回、空気を振動させています。
こちらが超音波センサの中身と同等の受信器です。超音波センサは送信と受信の2つで1セットになっています。
構造を図にすると、このような感じになります。受信側も送信側もほぼ同じ構造になっています。
「圧電素子」には、面白い特性があります。
素子を変形させると電気を生み出します。これを「圧電効果」といいます。
逆に、電気を加えると素子が変形します。これを「逆圧電効果」といいます。
圧電効果の原理を活かすとセンサや発電機などを作ることができます。逆圧電効果の原理を活かすとスピーカ、アクチュエータなど作ることができます。
超音波センサの原理を図にしてみました。
まず、送信器は超音波を発生させます。超音波は障害物に当たって反射して、受信器に戻ります。音の伝わる速度は気温によって変化しますが、約340m/s(1秒間に340メートル進むという意味です)。たとえば、30cmの距離を音が伝わる時間は計算すると、
30×(1000000÷34000)=約882μsとなります。μs(マイクロセカンド)は1/1000000秒という単位です。超音波が往復するための時間、882×2=1.764ms。こうしたわずかな時間をマイコンで計測することによって、距離を求めています。
「オシロスコープ」という測定機器を使って超音波を計測してみたいと思います。受信機の両端子の電圧(電気の圧力)を測ります。 NXTのメニューの「VIEW-Ultrasonic」を選択して、超音波センサを動作させます。まず、正面から見て左側に受信器を当てました。
測定結果が写真のとおりです。
まず、オシロスコープの見方ですが、横方向が時間軸、縦方向が電圧の軸です。 画面を見ると、トゲ状の波形が約50msの周期で出ていることがわかります。ms(ミリセカンド)は1/1000秒という
単位です波形の振幅は±0.3Vほどです。この電圧は超音波が
受信器に当たり、圧電効果によって発生させたものです。
このトゲ状の波形を拡大していきます。写真にはうまく写りませんでしたが、波形の中にさらに細かい波形が見えました。
波形の1周期あたりの時間は25μsです。これが超音波です。
正面から見て右側に受信器を向けてみました。
すると、電圧が0Vになってしまいました。超音波を検出していない状態です。
つまり、超音波センサを正面から見た場合、左が超音波の
送信側、右側が受信側ということになります。
50ms周期に超音波が出ているということは、1秒間に20回までしか距離が測れないということです。
たとえば、1mの距離を1秒で移動中のロボットがあったとした
場合、超音波センサでは5cm間隔でしか距離は測れません。
もし、1cmごとに距離を測りたいのであれば、ロボットは秒速20cmのノロノロ運転をしないといけません。「高速で移動するロボットには超音波センサの使用は向いていない」ということになります。
◆ 回路図を見てみよう
超音波センサの回路図はLEGO社のサイトで「HDK」の一つとして公開されています。
回路図です。受信器の出力は4つのトランジスタを使って増幅しているようです。 NXTとの通信にはI2Cという技術を使っています。I2Cを使うとデジタルで距離の情報をNXTへ伝えることができます。回路をもっと細かく見たい方はLEGO社のサイトからダウンロードしてください。
当ブログの内容は、弊社製品の活用に関する参考情報として提供しております。
記載されている情報は、正確性や動作を保証するものではありません。皆さまの創意工夫やアイデアの一助となれば幸いです。