2024年11月21日

007-1.モーター制御入門-第2回「モーターの最高速度」

ここでは、モーターの制御に関わる技術を紹介していきたいと思います。ロボット競技にも応用してみましょう。(文/松原拓也)

◆ 「rpm」とは

前回は、このモーターブロックという命令の中にある「パワーコントール」という機能を使っていましたが、 今回はそれを使わない状態でモーターの回転速度を求めてみたいと思います。
そして、回転速度は前回、「度/秒」という単位を使っていましたが、今回は「回転/分」という単位を使ってみたいと思います。
「回転/分」の別名は「rpm」です。「rotation per minute」の略で、「アールピーエム」と呼びます。
rpmは、自動車やバイクやモーターや電気ドリルなど、いろいろな分野で回転速度を表す単位として使われています。

プログラムを作りました(program-1)。
rpmを表示するためには、前回のプログラム(program-2)の赤ワクの部分を書き換えるだけで作れます。

赤ワクの部分を拡大してみました。
なにをやっているかというと、値を「度/秒」→「回転/分」に 変換しています。
1分=60秒なので、60倍します。 さらに1回転=360度なので、360で割ります。 変更はこれだけです。

実行してみましょう。
「109.477 RPM」と表示されました!
「1分あたりに109回転する回転速度」という意味になります。
1分を待たなくても、1分あたりの回転速度を求めることができます。

では、この「109rpm」が正しい値なのか、 検証をしないといけません。
まず、最初にモーターを動かすモーターブロックの設定を見てみましょう。 モーターのパワーは「75」。そして、パワーコントロールが「オフ」になっています。 持っているパワーの7割くらいを出すと「109rpm」になるということです。

ちなみに、この「109rpm」という回転速度って想像がつきますでしょうか。 時計の秒針は「1rpm」です。 自転車のペダルは普通にこいだら「60rpm」くらいでしょうか(個人差がありますけど)。
最近のハードディスクは「15000rpm」で回転するものがあります。

アフレルが公開している技術資料(http://www.ev-3.net/tech)の中に、NXT用モーター(インタラクティブ・サーボモーター)の回転速度が紹介されています。 それによると「165rpm」と書かれていますね。さきほどの「109rpm」とかなり食い違っていますが、 こちらの値はパワー100で回転させた場合だと思います。

さらにモーターに対する負荷も重要です。
「165rpm」はおそらく無負荷の状態だと思われます。
たとえば、タイヤを付けて、一定の速度で空回りとしていると、 負荷はかかりません。これが無負荷です。回転にかかる力をトルクと言います。 タイヤが地面に当たったりすると、負荷がどんどん増えていきます。 モーターのストールトルク(Stall torque)より負荷が大きくなると、モーターは止まってしまいますが、その時、モーターに流れる電流は最大になります。回路の安全を考えると、この状態は避けた方がいいです。

◆ 角速度を計る(パワー0~100)

言い忘れましたが、 この実験ではリチウムイオンバッテリーを使っています。
できるだけ速くモーターを回したいので、 DCアダプタをつなぎました。

さらにプログラムを改良してみましょう。
パワー0~パワー100まで連続的に回転速度が出るようにしたのがこちらのプログラム(program-2.rbt)です。 前回のprogram-3.rbtを改造しました。

プログラムの改造部分を拡大してみました。さきほどと同じく、値を「度/秒」→「回転/分」に 変換しています。

プログラムの先頭部分です。 変数「power」がモーターのパワーです(0~100)。 パワーコントロールが「オフ」になっています。 パワーコントロールがオフということは、 バッテリーの残量がそのままモーターの回転速度に影響します。 インテリジェントブロックの中には電圧を安定させる回路があり、マイコンはそれで動いていますが、モーターの場合はバッテリーの電気がそのまま供給されるしくみになっています。

◆ バッテリーと回転速度の関係

実行してみました。
少しずつ、パワーが上がっていきます。 最終的にはパワー100の回転速度が求まり、終了しました。
およそ「150rpm」ですね。 技術資料の「165rpm」より遅い結果なのが、気になりますが、 ほとんど仕様どおりの数値が出ました。 これがモーターの限界速度のようです。

他のバッテリーの場合も確認してみました。
ニッケル水素電池である「エネループ」を6本使って、実行してみました。
結果は「139rpm」です。
ガタっと結果が落ちましたが、理由はバッテリの違いにあるようです。今回は無負荷なので、電気を流せる性能については、違いが出ないと思いますので、単純に電圧の違いから差が出たようです。 ニッケル水素電池の電圧は1.2×6=7.2V。リチウムイオンバッテリーは7.4Vで動作することになっています。 その差0.2Vですが、実際には0.5Vほど差がありました。 満充電すると、公証の値よりも電圧が大きくなります。

表計算ソフト(googleドライブのスプレッドシート) を使って、「7.7V」の場合と、「8.2V」の場合をグラフ化してみました。
サンプルが2点しかありませんが、 比例しているように見えます。
150÷8.2=1Vあたり約18rpmだとすると、 165÷18=9.166...
つまり、バッテリ電圧が9.1Vくらいだと165rpmに達する計算になります。 ちょうど、アルカリ電池を使えば、1.5V×6本=9Vにできますね。
本当に計算どおり「165rpm」で回転できるかどうか、、、は自分の目で確かめてみましょう。今回はここで終わります。

[DOWNLOAD]今回作成したプログラム(教育用レゴマインドストームNXT2.0以上推奨)

当ブログの内容は、弊社製品の活用に関する参考情報として提供しております。
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