2024年11月12日
002-3.エレキ入門-第2回「バッテリ」
レゴマインドストームを「電気」という視点で紹介するというコーナー、名付けて「エレキ入門」です。
電気の知恵をロボット作りに生かしてみましょう。(文/松原拓也)
◆ 前回のおさらい
突然ですが、前回の「超音波センサ」の解説で難しかった(かもしれない)部分をフォローしておきます。
復習用としてご覧ください。
音とは、空気などが振動していることで伝わります(真空では音は伝わりません)。
たとえば、輪ゴムを張って、指で弾いてみると音が鳴ります。
輪ゴムによって空気が振動しているためです。
早く振動するほど、音は高くなります。
音による空気の振動をグラフにできたとすると、図のようになります。横軸が時間、縦軸が振動の度合いです。 ちょうど輪ゴムと
同じで、一定の位置を往復しています。波のような形をしているので「波形」と呼びます。 マイナス方向の往復とプラス方向の往復を1セットだけ切り出したものを「1周期」と呼びます。 1周期の長さを波長といいます。
これら一連のことは、高校の物理で習う内容です。
前回に登場した「オシロスコープ」についても補足しておきます。
こちらがオシロスコープです。オシロスコープとは波形を見るための装置です。
オシロスコープの原理を簡単に紹介します。オシロスコープは電圧をグラフにして描きます。 図でたとえると、このような感じです。まず、電圧によって動くペンがあり、紙に線を引きます。紙は時間によって動きます。するとグラフが出来あがります。
オシロスコープはこれに加えて「紙の巻き戻し機能」が付いています。 何度も巻き戻って表示してくれるので、1周期あたりの波形を目で確認できるわけです。
、、、いかがでしょうか。やっぱり難しいでしょうか。もし、難しいと思ったら読み飛ばしてください。
◆ 電池(バッテリ)について
いよいよ本題に入ります。
今回は電池(バッテリ)について考えてみたいと思います。
バッテリとは、電気を送り出すものです。電気が流れるという現象は小学校で習っていると思います。電池はプラス(+)から電流が流れます。
正確には「電子」というものがマイナス側から出ているのですが、今回は説明を省きます。
マインドストームでは単三型のアルカリ電池またはニッケル水素電池を6本使っています。電池は直列につながります。
たとえば、電圧が1.5Vの電池を6本直列につなぐと、合計の電圧は9Vになります。ちなみに「V」は電圧の単位で、ボルトと読みます。
電圧というのは、電気の圧力のことです。 圧力というのは、
イメージしにくいので、ここでは「電気=水」「電圧=高さ」として
図に表してみました。
高いところから水を落とすと、低い時よりも水車は勢いよく回ります。電気の世界でも同じです。
電池の残量が少なくなってくると電気のパワーが落ち、電圧が
下がってきます。
アルカリ電池だと最後には電圧が無くなって、ゴミになってしまいます。充電はできません。
ニッケル水素電池の場合だと0.9~0.8Vくらいまで電圧が下がったら、充電してください。電圧が下がりすぎると壊れてしまいます。
◆ リチウムポリマーバッテリ
一般用には付属しませんが、レゴマインドストームにはリチウム
ポリマーバッテリというものがあります。リチウムポリマーバッテリとは「リチウム」「ポリマー(高分子)」という材料を使ったバッテリの種類の一つです。
このバッテリを単三電池の代わりに取り付けると、装着した状態のままで、充電ができるようになります。
電池代を節約できるメリットがありますが、厚みが増してしまうのが欠点です。
バッテリの残量はNXTソフトウェアを使ってパソコン上で確認できます。
たとえば「7.6」と表示されていたら、7.6Vという意味です。
◆ 電圧の減り方
バッテリの「電圧が減る」という現象を確認してみます。
電圧を計測した状態のままで、ためしにモーターを3分くらい回してみました。
モーターを回す前の状態で7.6Vだった電圧が、 7.4Vに落ちました。一応、確認できました。
ただし、モーターを止めてしまうと、電圧が7.6Vに戻ってしまいました。これは電池の特性の一つです。
バッテリの減り方をグラフにすると図のようになります(LEGO社がオープンソースとして公開しているHDKより)。モーター2個をフルスピードで回した状態(5秒おきに逆転)でバッテリの電圧を測ったものだそうです。電池にはアルカリ電池を使っています。赤いグラフはニッケル水素ではないかと思うのですが、HDKにはハッキリ書いてませんでした。
このグラフを見て分かることは、、、「電池がなくなるまでに5時間はかかる」「動作中はバッテリ電圧が2Vくらい上下する」などです。
続いて、リチウムポリマーバッテリでモーターを回した場合のグラフです。アルカリ電池と比べると、30分くらい尽きるのが早いですが、電圧があまりギザギザしていません。これはリチウムポリマーバッテリが大電流の放電に優れているためです。短時間でパワー勝負のロボット競技ならば、リチウムポリマーバッテリを使った方がいいかもしれません。
◆ 電圧とセンサの関係(1)
電圧がセンサの動作にどういう影響を与えるのか。検証してみました。
NXTにライトセンサをつないで、その正面に灰色のアームを取り付けました。
「View」をメニュー選択してライトセンサの輝度を計測してみました。表示は22~23%あたりをしめしています。
ここで、「電池残量の少ない状態」を再現してみます。ニッケル水素電池(約1.2V)を一本だけ外して、空いた部分にクリップをつないでみました。ショートすると危ないので、真似しないでください。
これで、1.2V x 5=合計6Vくらいになっていると思います。起動時に「LOW BATTERY(電圧が低い)」と表示されました。
NXTソフトウェアを使って、測定してみました。バッテリ電圧は6.3Vと表示されています。
この最低限ギリギリの電圧の状態で、ライトセンサの値を読みとってみました。結果は22~23%。値は変わりませんでした。
◆ 電圧とセンサの関係(2)
続いて、「バッテリ電圧が高い状態」を再現してみます。リチウムポリマーバッテリを付けて、満充電の状態にしてみました。充電が完了すると、赤色のLEDが消灯します。
これで電圧を測定してみます。
8.4Vでした。バッテリの限界まで電圧を高めた状態です。
この状態でライトセンサの値を読み取ってみました。
結果は、、、22~23%でした。
変化はありません。
何度見ても、カウント値に変化はありませんでした。
バッテリ電圧が 6Vでも8Vでもセンサには影響が出ないということになります。
なぜバッテリ電圧が変わってもセンサに影響がないか?
以下、推論なのですが、マイコンとセンサはそれぞれ「三端子レギュレータ」によって出力された電源で動いています。 マイコンは3.3V、センサ類は約5Vで動いています。この三端子レギュレータで電圧を安定化していることによって、動作が安定しているのではないでしょうか?
◆ 電圧測定プログラム
NXTインテリジェントブロックのバッテリ電圧を液晶画面に表示するプログラムを作ってみました。
テスタを使ったり、パソコンに接続したりしなくても電圧を確認することができるので、便利だと思います。
NXTソフトウェアには電圧を取り込むブロックがありませんので、「BricxCC」という開発環境でプログラムを作ります。プログラムの言語は「NXC」を使ってみました。
プログラムはいたってシンプルで、「BatteryLevel」という関数を呼ぶだけです。
【Download】電圧測定プログラム(zipファイル / 1115 Bytes)
実行結果です。画面に電圧が表示されました。電圧の単位はmV(ミリボルト)です。たとえば、「8000」と表示されたら、8.0Vという意味になります。
NXTインテリジェントブロックがどうやって、電圧を読み取っているのか? 説明しておきます。専門的なことなので、難しいと思ったら読み飛ばしてください。
写真はNXTインテリジェントブロックの回路図です(LEGO社がオープンソースとして公開しているHDKより)。中に2つのマイコンが入っているのですが、そのうちのサブCPU(MPU)側である「ATmega48」のAD入力がバッテリにつながっています。ここから電圧を読み取っています。
サブCPUで求めた電圧値はメインCPUに伝えなければいけません。ここでは、I2Cという通信技術を使って、メインCPUに伝えています。
電圧を読み取るためには、「AD変換(エーディー変換)」という技術を使っています。 AD変換はアナログ-デジタル変換の略です。
電圧はアナログ的なもので、それでデジタル的なものに変換しているわけです。
当ブログの内容は、弊社製品の活用に関する参考情報として提供しております。
記載されている情報は、正確性や動作を保証するものではありません。皆さまの創意工夫やアイデアの一助となれば幸いです。