プログラミングやロボットに触れ子どもたちに学ぶ機会を提供する、CSRの取り組みをご紹介
2019年10月5日、宮城県の石巻専修大学で、小学生とその家族を対象とし、ロボットプログラミングを体験する「家族ロボット教室」が開催されました。
この教室は東日本大震災の復興支援として、(株)富士通コンピュータテクノロジーズの社員ボランティアが2011年から2019年3月まで8年間にわたって行ってきた活動です。富士通グループは2011年3月の東日本大震災の直後から、通信施設の復旧をはじめ、様々な形でサポートを行ってきました。そのひとつが、この「家族ロボット教室」です。被災地の子どもたちとその家族に、ものづくりの楽しさを知ってほしい、もっと科学への興味を高めてほしい、将来の夢をもってほしいというねらいのもと「教育版 レゴ® マインドストーム® EV3」を使ったロボットプログラミング教室を実施し、これまで岩手県を中心にのべ2,500人以上の家族が参加してきました。
2019年3月以降の家族ロボット教室は、これまで共催してきた地域の官庁や大学が中心になって活動を継続しています。石巻では高大産連携プロジェクトの一環として、石巻専修大学経営学部の工藤周平ゼミと「家族ロボット教室の会」が連携し、地域の子どもたちや学校などに向けてロボットプログラミング体験教室を開催しています。
2011年から家族ロボット教室をサポートしてきたアフレルは、2019年以降も引き続き「産官学」の「産」として様々なサポートを行っていきます。
宮城県石巻の「家族ロボット教室」に密着
2019年10月5日に行われた石巻市での「家族ロボット教室」は、プログラミングの研修を受けた石巻専修大学の職員や学生、(株)アフレル代表取締役社長 小林靖英と2019年に入社したカスタマーセンター所属の高崎、さらに岩手県から駆け付けた一関高専の秋田敏宏准教授が参加し、子どもたちのトレーナーとしてサポートしました。
当日は午前と午後の2回にわかれ、それぞれ15組ほどの家族が参加しました。受付が始まると、子どもたちが続々と教室に入ってきます。その顔には、これから始まる体験への大きな期待が感じられました。中には「去年からずっと来たかったんです!」とうれしそうに話してくれたご家族もいました。
教室では、まずコンピュータやロボットとはどんなものかを考えるところから始めます。
解説するのはこれまで「家族ロボット教室」を主導してきた富士通コンピュータテクノロジーズ出身の「家族ロボット教室の会」メンバーです。2011年から運営を担当している江口かおるさんが、ものづくりや技術者の仕事について、わかりやすく解説しました。
その後、いよいよ待ちに待ったロボット作りが始まります。参加した子どもたちの多くはプログラミングの体験がほとんどなく、マインドストームを触るのも今回が初めての子ばかりです。組立図を見ながら、ひとつひとつ丁寧にレゴブロックを組み合わせていきます。
ロボットが完成したところで、教室の後ろにいるスタッフのところへ行き、「車検」を行います。これはロボットコンテストWRO」でも採用されているルールで、WROでは作ったロボットが既定の範囲かをチェックしますが、この教室ではブロックがきちんと組まれているか、部品の向きが間違っていないかなどをスタッフがチェックしました。
車検では、今作ったロボットがどのような構造で動いているのかを教えてもらいながら、「もののしくみ」への理解を深めていきます。
失敗しても諦めない!
全員が粘り強くプログラミングに挑戦
ロボットが完成したら、次にパソコンでロボットを動かすためのプログラミングに挑戦します。マインドストーム専用のプログラミングソフトウェアは、ブロック型の命令をつなぎあわせていくビジュアルプログラミングなので、初めての子どもでも比較的簡単にプログラムを組むことができました。
まっすぐ進むところから始め、「ジグザグに進む」「コースに沿って進む」と、少しずつ難易度を上げていきます。最初は順調だった子も、次第にうまくいかなくなり、「どうしてだろう?」と頭を悩ませながら何度も挑戦していました。
スモールステップで進むことで毎回の成功体験と達成感を得られ、次へ進む意欲につながっていきます。
今回のロボット教室では、最後に全員がレースにチャレンジし、誰が一番速くコースを走らせることができるかを競いました。
トレーナーがストップウォッチで走行タイムを計りだすと、子どもたちの目は真剣になっていきます。「1秒でも速くしたい」という思いから、パソコンの画面に向かい、何度も何度もプログラムを調整します。たどたどしくキーボードを触っていた1時間前よりずっと頼もしく、一人一人が小さなプログラマーになっていると成長を感じた瞬間でした。
そして、レースの時間がやってきました。スタート地点に慎重にロボットを置き、レースの行方を真剣な表情で見守ります。しかし、レースにはアクシデントがつきもので、コースアウトしてしまったり、練習では順調だったのに本番では操作ミスで進めなかったりするロボットもありました。
ゴールタイムが速かった4名でさらに決勝戦を行い、優勝者を決定。最後の修了証書授与では全員に修了証書と記念品が手渡され、石巻での家族ロボット教室は終了しました。
参加者が帰った教室で、記入してもらったアンケートをスタッフ全員で読むと、そこには、
「楽しかった!」
「もっとやりたかった」
「子どもが自分から色々と発想して、よい勉強になりました」
「やさしくサポートしてくれてありがとうございました」
といった、子どもたちからの「楽しい」という声、そして保護者の方々からの感謝の言葉が綴られていました。
家族ロボット教室に参加して
アフレルからトレーナーとして「家族ロボット教室」に初参加した高崎は、この経験で色々な発見があったと話します。
「子どもが『教えて』と言った際、『自分で考えてみて』と伝えている保護者の方がいました。でも、放っておくというわけではなく、子どもが困ってどうしようもなくなった時は適切なアドバイスをされていて、とても良い教育方針だなと思いました」
さらに、高崎は「プログラミングはトライ&エラーができるところが強みということも改めて感じました。だからこそ、プログラミングを通して、失敗を恐れず何度でもチャレンジする力を身に付けることができるんだと思いました」と、プログラミングについての考えを新たにしたことを話しました。
また、トレーナーの経験を通じて、プログラミングを初めて体験する子どもが「どこを難しいと思うのか」「どこにつまづくのか」を知ることができたことは大きいと高崎は話します。「これらの経験は、カスタマーセンターにお問い合わせをするお客様が何に困っているか、どこでつまづいているかを想像しやすくなったと思います」
同様に、トレーナーとして参加した石巻専修大学の学生の皆さんからも、「実際に子どもたちと接してみて、教えることの難しさを感じました。また、みんなで協力しあったことで、自身のコミュニケーションスキルの向上にも役立ったと思います」といったお話を伺いました。家族ロボット教室に参加した子どもたちだけでなく、その保護者、そしてトレーナーにも新しい気付きや学びがあったワークショップでした。
「2012年に初めて参加した陸前高田市では、当時の市街地は何もない状態で、仮設住宅からこの教室に参加してくれていた家族も多かったと思います」
(株)アフレルの小林は「家族ロボット教室」に参加した2012年を振り返って、こんなエピソードを話してくれました。
「家族ロボット教室実施に協力された市の教育委員会の方が、『今は子どもたちが遊べる場所がない、会社や工場もなくなって職場体験もできない、親子や家族でともに過ごせるような場所もない状態。そんな中、家族ロボット教室は休日に家族で楽しくできるし、コンピュータやものをつくる職業教育にもつながり、また、子どもたちが生き生きとやっている。未来の街づくりにきっと役に立つ、こんなにありがたいことはない』と、おっしゃっていたことを覚えています」
そうした体験をもとに、小林は「これからも、ITと教育支援を事業とする私たちができることを継続していこうと思います」と語りました。
たくさんの家族を笑顔にした「家族ロボット教室」は、これからも東北の子どもたちにプログラミングの楽しさを伝えていきます。